これからアパート経営を始めようとしている方は、
「金融機関からの融資を受けて建築したいが、自己資金はいくら必要なのだろう」
と考えていらっしゃるのではないでしょうか。
金融機関からの融資だけでアパート経営が出来れば良いのですが、ある程度の自己資金は必要となるケースがほとんどです。
では一体いくらのほどの自己資金が必要なのでしょうか。
ここではアパート経営の費用項目を説明し、必要な自己資金額について解説していきます。
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アパート経営に必要な資金を3つ紹介
アパート経営の建築費用にはたくさんの項目がありますが、どんな費用があるのでしょうか。
ここでは新築アパートを建築して経営を始める際の項目費用を3つ、
- 本体工事費用、外構工事費用、附帯工事費用について
- その他に必要な資金とは
- アパートを維持する上で必要な資金とは
にわけて解説していきます。
本体工事費用、外構工事費用、附帯工事費用について
アパートの建築工事における費用別項目は、国土交通省の業種区分建設工事のガイドライン、29項目に分かれ、更に下記の3つ、
- 本体工事費用
- 外構工事費用
- 附帯工事費用
の項目に分けている会社が多いです。
また、アパート建築費用の総額のうち、70%から80%が上記3つの費用になることが多いでしょう。
大手ハウスメーカーは費用を項目ごとに分けておりますが、工務店などは項目を分けていないケースがあります。
これらを分ける理由としては、減価償却費の計算をしやすくするためでもあります。
減価償却費とは、項目ごとの費用を法令で定められた年数に分け、経費計上できる経理上の項目です。
確定申告の際に項目ごとに分かれていると経費の計算がしやすく便利です。
本体工事費用
本体工事費用はアパート建物工事の根幹をなす工事費用です。
基礎工事から躯体工事、屋根工事などが該当します。
更に細かく詳細を出せば、20以上の項目になります。
各社ハウスメーカーの本体工事費用を比較する際は坪単価を用います。
坪単価は本体金額から延べ床面積を割った価格です。
一般的に、木造アパートの坪単価は60万円、軽量鉄骨造の場合は70万円、重量鉄骨造の場合は90万円です。
外構工事費用
外構工事費用は建物以外の外回りの工事を指します。
一般的には敷地面積×10,000円前後が相場ですが、地域によって金額が変わります。
また、ハウスメーカーに外構工事を依頼した場合は利益が乗るため、敷地面積×12,000円前後と想定していた方が良いでしょう。
附帯工事費用
付帯工事には給排水工事や電気工事などが含まれます。
前面道路にある水道管の太さや電柱までの距離により金額が変わります。
そのため、相場という金額はありません。
その他に必要な資金とは
アパート建築にはその他にも必要な資金があり、アパート建築総額費用の20%から30%が該当します。
主な必要資金の項目は全部で5つ、
- 銀行融資関連費用
- 司法書士、土地家屋調査士関連費用
- 火災保険料、地震保険料
- 印紙代、申請関連手数料
がありますのでご紹介していきます。
銀行融資関連費用
融資手数料、期中利息費用などが該当します。
融資手数料は金融機関によって異なりますが、3万円から10万円前後です。
期中利息費用とは、工事期間中の融資利息費用のことです。
アパートを建築する際、建築会社に着工時、上棟時、引き渡し時などに分けて工事代金を支払いするのが通常です。
着工時に支払いする際、一度金融機関から融資を受けて建築会社に支払いします。
支払い後は、借入返済が開始しますが、建物も完成せず、家賃収入も得られないため、返済を据え置きすることも可能です。
据え置きしている間は借入返済する必要はありませんが、利息だけは支払う必要があります。
司法書士、土地家屋調査士関連費用
表題登記、保存登記を依頼する際にかかる費用です。
- 表題登記
表題登記は建物の所在や構造などを法務局にて登録することを指します。
おおよそ8万円から10万円前後の費用になります。 - 保存登記
アパートの所有者が誰なのかを登録することを指します。
世帯数×4万円+10万円(司法書士手数料)がおおよその費用です。
火災保険料、地震保険料
各種保険に必要な費用になります。
- 火災保険料
火災保険は保険を掛けた日から10年間に適用となります。
掛けた日に一度料金を支払えば、10年間は支払う必要はありません。 - 地震保険料
地震保険は最大5年間適用になります。
火災保険同様、一度支払えば保険が切れるまで支払う必要はありません。
火災保険料と地震保険料はオプションなども加味すると、自分で計算するのは困難なため、保険会社に見積もりを取りましょう。
印紙代、申請関連手数料
アパート建築に関する印紙代、申請手数料は下記になります。
- 工事請負契約印紙代
アパート建築会社と契約する際に必要な印紙代金です。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
100万円を超え 200万円以下のもの | 400円 | 200円 |
200万円を超え 300万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
300万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え 5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
引用:https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/12/03.htm
- 金銭消費貸借契約印紙代
金融機関と融資の借り入れ契約をする際の印紙代です。
借入額によって印紙代金がかわります。
記載された契約金額 | 税額 |
100万円を超え200万円以下のもの | 200円 |
200万円を超え300万円以下のもの | 500円 |
300万円を超え500万円以下のもの | 1千円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 5千円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 6万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 16万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 32万円 |
50億円を超えるもの | 48万円 |
引用:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm
- 確認申請手数料
アパート建築を申請する際の手数料になります。
各行政や延べ床面積によって申請手数料が変わります。
500㎡前後であればおおよそ5万円から8万円前後でしょう。 - 中間検査手数料
建物が上棟した際の検査手数料です。
こちらは地方によっては不必要になるケースもありますが、建築確認申請同様、行政や延べ床面積で費用は変わります。
おおよそ500㎡前後であれば、5万円から10万円前後です。 - 完了検査手数料
建物が建築確認申請通りに完成したかを確認するための手数料です。
こちらも確認申請手数料、中間検査手数料と同様に、行政や延べ床面積によって変わります。
おおよそ500㎡前後であれば、5万円から10万円前後です。
アパートを維持する上で必要な資金とは
アパートを経営していると、修繕費などのランニングコストがかかってきます。
将来的に外壁補修や屋根塗装など、足場を使う補修工事をする場合、300万円から500万円、もしくはそれ以上が必要となるケースがあります。
そのため、家賃収入のうち、毎月2万円から4万円の費用を積立しておくと良いでしょう。
自己資金0円でアパート経営はできるのか
アパート経営を始める際に自己資金が気になるところでしょう。
できれば自己資金が0円で始めたい方も多いと思います。
金融機関から融資のみで、自己資金0円でアパート経営はできるかを解説していきます。
土地を買って新築アパート経営をする場合
土地を購入してアパート経営をする場合、自己資金0円は難しいでしょう。
一般的に金融機関から借り入れして建築する場合、土地代金は全額自己資金対応が標準です。
土地から仕入れてアパート建築となると、利回りが大きく下がるので、金融機関から自己資金が求められます。
しかし、数億円以上の資産家があればできる可能性はあります。
中古アパート経営の場合
中古アパートの場合、自己資金0円で経営できる可能はあります。
一般的に金融機関の査定基準としては、築年数10年未満、利回り10%から15%以上などの条件があります。
しかし、そのような物件は滅多にないので、探すこと自体難しいです。
自己資金はいくら必要なのか
アパート建築を金融機関等からの借入で始める場合、必要自己資金は総事業費の3割ほどと言われてます。
総事業費の内訳は建築費が7割、諸費用が3割と言われており、金融機関の見解は、諸費用分は自己資金で対応するというのが一般的です。
しかし、諸費用分も含めた総事業費を全額融資してくれる金融機関もあります。
土地の価値、事業性の価値、土地所有者の価値などが判断材料です。
ここでは金融機関がどのように判断しているかを解説していきます。
実際のシミュレーション
金融機関が全額融資する際の判断基準は下記の3つ、
- 担保評価
- 事業収支
- 属性の確認
になりますので解説します。
担保評価
担保評価とは、その土地と建物がどれくらいの資産価値なのかを評価する事です。
金融機関から借り入れする際、必ず担保評価計算をします。
土地の担保評価は敷地面積(㎡)×路線価×40%で算出可能です。
路線価とは、国税庁が定める宅地の1平方メートル当たりの評価額を指します。
引用:財産評価基準書|国税庁 (nta.go.jp)
建物の場合、担保評価は本体金額×0.5×40%で算出可能です。
土地と建物の担保評価を合算し、建築費用より大きければ全額融資してくれるケースもあります。
不足している場合、共同担保を要求するケースもあります。
共同担保とは、アパート建設予定地とは違う土地に、担保を設定する事です。
設定されることにより、その土地が売却できなくなる場合や、その土地でアパート建築する際、他の金融機関から借入出来なくなります。
共同担保は身動きできなくなる土地でもあるので、極力避けましょう。
事業収支
金融機関はアパート経営の事業性を検証する際は、下記の3つの条件、
- 入居率70%
- 借入金利4%から5%
- 借入期間20年
を踏まえて検証します。
条件を踏まえ、毎年の事業収支が黒字であれば全額融資も可能となる場合があります。
この条件をクリアできるのは、アパート経営の利回りが10%以上となるでしょう。
属性の確認
アパート経営をする方の資産、つぎの事業者を確認します。
金融機関はアパート経営をする方の資産が多いほど、全額融資をしてくれやすくなります。
将来、相続税対策などでアパート建築をする際、融資相談してもらうためです。
また、賃貸住宅の事業者が亡くなった後、次の事業者が
- 事業者が返済の力があるのか
- 事業を継続していける能力があるのか
を判断します。
もちろん返済能力がないと判断すれば、金融機関は融資不可と判断するでしょう。
サラリーマンが融資受けるには
サラリーマンが土地を購入してアパートを建築する際は、年収1,000万円以上と言われております。
しかし、土地を所有しているサラリーマンの場合、その土地でアパート経営が成り立つので、金融機関は年収を加味しないケースが多いです。
その土地で経営するアパートの担保評価、事業性、利回り、家系図などから金融機関は判断します。
また、運転免許証も確認し、12桁目の数字が3以上であれば融資不可となるケースが多いです。
12桁目は、免許証の紛失回数の数字であり、紛失が多い人はだらしないと判断されます。
金融機関は、借入返済を滞納や延滞する恐れがあると考慮するためでしょう。
自己資金0円でアパート経営をする裏技
自己資金0円でアパート建築し経営を始めたい方は金融機関の融資と、住宅支援機構の融資を組み合わせれば、自己資金0円で出来るケースもあります。
住宅支援機構には賃貸住宅融資という金融商品があります。
こちらの融資を利用すれば、金融機関からの融資を使わずにアパート建築できますが、金利は金融機関より高い傾向があります。
そのため、金融機関からの融資を第一優先し、建築資金に対し借入額が不足した場合に用いりましょう。
もちろん条件はさまざまありますので、金融機関と住宅支援機構に相談してみましょう。
土地活用してアパート経営をするメリット2選
土地所有者がアパート経営をするメリットは大きく2つ、
- キャッシュフローが土地購入者より良い
- 相続税対策になる
がありますので解説していきます。
キャッシュフローが土地購入者より良い
アパート経営はサラリーマンにも副業として人気がありますが、多くの方は土地を購入してアパート建築をしなくてはいけないため、収益が弱いです。
一方すでに土地を所有している方は、土地代金が不要となりますので、キャッシュフローが高い傾向にあります。
一つ例を挙げて、土地を所有している場合と土地を購入する場合を比較してみましょう。
土地所有者がアパート建築する場合の条件
条件の詳細について、表にまとめました。
木造アパート建設費用 | 7,000万円 |
借入金額 | 7,000万円 |
借入期間 | 30年 |
金利 | 1.5% |
間取り | 1K |
世帯数 | 8世帯 |
家賃 | 7万円 |
- 毎月の家賃収入
70,000円/月×8世帯=560,000円/月 - 借入返済
7,000万円を30年で元利均等返済した場合241,584円/月 - キャッシュフロー(手残り)
家賃収入560,000円/月-借入返済241,584円/月=318,416円/月
土地を購入してアパート建築する場合の条件
条件の詳細について、表にまとめました。
木造アパート建設費用 | 7,000万円 |
土地代金 | 5,000万円 |
借入金額 | 12,000万円 |
借入期間 | 30年 |
金利 | 1.5% |
間取り | 1K |
世帯数 | 8世帯 |
家賃 | 7万円 |
- 毎月の家賃収入
70,000円/月×8世帯=560,000円/月 - 借入返済
12,000万円を30年で元利均等返済した場合414,144円/月 - キャッシュフロー(手残り)
家賃収入560,000円/月-借入返済414,144円/月=145,856円/月
上記を見比べても、土地所有者であれば土地代金もかからないため、借入金額も少なく、キャッシュフローも大きい特徴があります。
しかし、実際の空室率も加味する必要があります。
2018年度の全国平均空室率は21.4%です。
引用:https://www.chintai.or.jp/common/img/pdf/h30akiyakakuhou.pdf
土地を購入してアパート建築した場合、2部屋空きが出たら、空室率は25%となり、赤字経営となります。
一方、土地所有者の場合は空室率50%でもキャッシュフローが出ることがわかるでしょう。
相続税対策になる
現金でアパートを建築した場合、相続税対策にも繋がります。
相続税は資産価値によって納税額が決まりますが、現金よりアパートの方が資産価値は低くなります。
例えば、現金1億の場合、相続の際は1億円に対し納税額が決まります。
一方、1億円の現金でアパートを建築した場合、資産価値はおおよそ6割から7割ほどになり、納税額も少なくすることが可能です。
アパート経営をするうえで注意する事3選
これまでアパート経営を始める際の自己資金について解説してきました。
次にアパート経営をするうえで注意する事を3つ、
- リスクを分散する
- 利回りばかりを見ない
- 建築動機を確認する
を解説していきます。
リスク分散する
リスク分散について、2つの具体的な内容で説明します。
同じ間取りにしない
アパート経営を複数棟所有する場合や、1棟あたりの世帯数が多い場合は、同じ間取りにしないことをオススメします。
もちろん需要が一番大切ですので一概には言えません。
しかし、間取りが同じであるために、物件同士競合してしまうことが考えられます。
また、学生をターゲットにした1Kなどの間取りは、3月に一斉退去される恐れもあります。1LDKなど、社会人用の間取りも含める事を検討しておきましょう。
サブリース管理をする
アパート経営は空室のリスクがあります。
空室リスクを抑えるためにサブリース管理をオススメします。
サブリース管理は、空室があっても毎月一定の収入を得る管理方法です。
不動産会社の一般管理と違い管理手数料は高いものの、空室リスクを抑えることが可能でしょう。
利回りばかりを見ない
アパート経営の利回りはとても重要な指標であり、悪ければ収益は出ません。
利回りを最優先するのであれば、敷地に対して収益を一番多く出せる1K一択になるでしょう。
しかし、利回りが良いからといっても需要が無ければ意味がありません。
地域の需要に合った間取りを検討しましょう。
建築動機を確認する
アパート経営を始める際は必ず動機があります。
収益が欲しいのか、相続税対策なのかによって建築金額、間取りも変わってくるでしょう。
相続税対策なのに収益が高いアパート経営をした場合、毎年キャッシュが溜まっていくので、資産が増えて行き、対策にならないなどのことも考えられます。
そのため、アパートを経営する動機を忘れずに、用途に合った事業を検討する必要があります。
まとめ
これまでアパート経営の費用項目を説明し、必要な自己資金額について解説してきました。
基本的にアパートを建築し経営を始める際は、自己資金が求められるものの、その人の年収、資産、預金によっては自己資金0円で始めることも可能です。
また、一度自己資金を捻出してアパート経営を始めれば、家賃収入が得られます。
家賃収入を貯めれば、次のアパート投資にもつながることでしょう。
預金に余裕のある方は、アパート経営を始めてみてはいかがでしょうか。
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